定年を迎えた高齢者(施主60代夫婦)の暮らしをより豊かなものにするために日常と非日常を空間化した住宅である。敷地内は建物含めて庭/縁側/生活空間/光縁/客ノ間といった5つの領域によって構成されている。住宅地の境界に以前から疑問を持っていた。ここでは隣地との境界を曖昧にし、敷地奥では「街の余白」を繋ぐように家庭菜園を隣地と連続させた。「縁側」は前面では近隣との交流の場として、敷地奥側ではプライベートな家庭菜園の休憩スペースとして、さらに客ノ間への動線として計画。「日常的」な生活空間は1階に配置し縁側を介して前述の庭へと展開していく。来客時やお子さんの帰省時など「非日常的」な場所を客ノ間として2階中央に配置。客ノ間の周囲には二つ目の縁側として光縁が計画されている。光縁では屋根からの自然光が半透明の布の間で拡散し、さらに風が加わることで自然に呼応した「揺らぐ光溜」が生まれている。方形屋根、縁側といった形式が今後も有効であること、外部空間を積極的に暮らしに取り入れること、日々新しさを感じられる自然現象を空間に反映すること。それらが重なり合うことで老後の豊かな暮らしにつながればと考えた。