この住宅は佐々木事務所に隣接するコンセプトハウス兼自邸です。
建築は言葉や写真より体感してみないと伝わらないため設計事務所ではあまり例がありませんがモデルハウスを建てました。この住宅は要望を満たした一品生産型の住宅ではなく、どのような敷地にも通じる要素をもち、今後の提案の物差しになるような住宅を目指して計画しました。そこで住宅の基本となる各居室に必要な寸法の検証から始めました。
住生活の検証によると1.55mの幅があれば、どの居室も生活可能であることが分かりました。よってすべての部屋の幅を1.55mとしています。プロジェクトごとの要望に対して、この寸法を広げて計画を行っています。最小値を体験することにより、そこからどれくらい広くされるかお施主さんがイメージしやすくなっています。幅が狭いと窮屈な印象を持たれるかもしれません。この住宅では来場されたすべての方に確認していますが窮屈さを感じる方はいませんでした。その代わり小さな幅の中で感じる親密な感覚とともに、長さによって空間の解放感を感じます。外観は窓が少ないので室内は暗いと思われがちですが、写真の通り室内は光で満たされています。近隣や防犯が気になって開けられない窓、カーテンが下りたままの窓では、光も風も入らず窓が機能しないので、使える窓をどのプロジェクトでも提案しています。また、子供部屋はどうでしょうか?ご自身の経験から将来そこが倉庫になってしまうのが分かっていながら今も同じような部屋が大量生産されています。子供の就寝スペースと学習スペースを分解するだけで住宅計画は大きく変わります。 各居室は、階段に合わせて少しずつ位置をずらしながら螺旋状に配置しています。移動だけの寒くて暗くて延べ床面積を増やしコストを増やす廊下を最小限にするためです。ここまでお伝えしてきた【部屋の広さ】【使える窓】【子供部屋】【廊下】について知るだけでコストを有効に使い、自然のエネルギーを活かした住宅ができます。私たちがお伝えしたいのはカッコいいデザイン住宅ではなく、機能的で無駄がなく、自然光や風によって包まれる心地よい住宅ですが、HPではそれが伝わらず、勘違いされ続けて今に至ります。設計打合せは機能的な内容が多いですが、私たちがお届けしたいのは空間の心地よさや、光のうつろいの美しさであり、この住宅でもその一部を体感して頂けます。
動画:https://www.youtube.com/watch?v=gUsDbu5LDEc