群馬県の草津温泉にある、保養所の1階の和室二間を改修したいとの依頼だった。
既存の和室は、壁で仕切られ独立した二つの部屋だったのに対し、私たちはそれらを間仕切る壁を取り壊し、当初の部屋の配置とは90度回転するように新しい板間と土間をつくった。直接行き来ができなかった二つの部屋は四枚引きの雪見障子でゆるやかに分節された一室となり、利用者の人数や行為に合わせて可変する冗長性のある空間となった。
南北に細長い板間と土間を間仕切るこの四枚引きの雪見障子は、天井から吊られた透明ガラスの欄間が入った一本の鴨居によって支えられている。これらの障子は一枚が一般的ものの約2倍の幅であり、より少ない枚数で境界をつくることができる。また、組子は極力大きな割り付けとしたうえで、両面から障子紙を貼る太鼓張りにも似た手法を使うことで框以外の線の数をおさえ、面として障子部分をとらえられるよう配慮した。境界面には余分な線は要素として少なくなり、結果として、閉じられていても一体的な空間を演出している。
また、この障子とガラスの境界の高さは部屋の南及び西面の開口部の高さと、既存の和室と板間を仕切る障子のそれとも一致している。その交点において、点で交わるこれらのエッジは空間に緊張感をもたらす一方で、既存基礎と内装壁を分ける見切りや違い棚のように浮いた土間のベンチと重なりあい、レイヤーをつくることで奥行きを演出している。
これらの、点と線によって構成は、部材を重ねることでつくりだされる和室というものの構成そのもののであり、改修後の新しい空間を既存の建物と接続された部分としての性質をもたらしている。
今後は、この改修が建物に新しい息吹をふきこみ、より一層の活用を誘発することを願っている。
草津の板間
住宅/改修
群馬県吾妻郡
チーム
設計:AN architects + futuretank
施工:株式会社 赤城ハウジング
業務
現場監理
Photo by Shigeo Ogawa